ケース9/ハルちゃん

 

ハルちゃん/11歳

薬剤名

エポジン


投与時の体重と投与量

投与量は「体重による規定量」

 


投与回数と数値の変動

週2〜3回

2006.10.27~2006.11.24 10.0%→28.0%

※投与開始時のBUN/Creは135/6.6


他の貧血対策

ペットチニック


皮下輸液もしくは静脈点滴

輸液 ソルラクト200~250CC 

 

抗体について

たぶん出来ていない。

 

飼い主の感想

エイズ発病にともなう腎不全でした(腎不全の発覚は2006年8月23日です)。 

そのためか貧血の治療は輸血も含め消極的で、エポジンを投与してもらえる病院を探すはめになりました。 

やっと見つけた病院も「他の猫は使っていない」そうで、1箱(10アンプル入り)を最初に買い取ることが条件でした。 

ちなみにお値段ですが1箱15750円、あとは接種ごとに再診料840円と注射料1050円が掛かりました。 

アンプル自体は見ていませんが薬価から推測するに一番少量のものだと思います。 

エイズのため骨髄抑制が起きている可能性が高いこと、また腎自体の繊維化もかなり進んでおり、充分な効果を得るのは難しい、と事前に言われていましたが思いのほか反応は良かったと思います。 

2006年11月半ばからは腎不全悪化のほか口内が潰瘍化して食べることが出来ず24日を最後に通院はやめて、自宅での輸液のみとなりました。 

腎不全発症1ヶ月前にはヘモバルトネラで極度の貧血になっていますが、抗生物質投与後1週間で 12. 3→31.6に回復しており、腎不全でない状態でならかなりの造血力があったものと思われます。

 

食事...KD缶をメインに療法食ウェットを強制給餌。 

治療内容...コバルジン 1袋/1日、輸液 ソルラクト200~250CC・内服プリンペラン液・吐き気止めとしてプレドニン(半錠) /1日、口内炎対策及び食欲増進 ホメオパシーのレメディ各種コロストラム 

 

★エリスロ抗体についてですが臨床獣医師向けの雑誌「SA Medicine 39号」には[はじめは反応性もよく貧血の改善に効果的であるが、すぐに反応性がなくなってしまうことをよく耳にる。この現象は抗rHuEPO抗体ができるためであると思われていて、その時点でrHuEPOの治療をあきらめてしまう場合が多いようであるが、多くの場合が鉄欠乏症や造血栄養素(B12や葉酸)の欠乏によるものであることを知っておくべきである]

 

[抗体誘導作用がもっとも重要な副作用であり、rHuEPO投与を受けた動物の約30%で生じると考えられている]の記述がありました。 

 

 

管理人補足

感想欄に書いてくださった臨床獣医師向けの雑誌「SA Medicine 39号」の記述は、とても興味深いものだと思います。 

3つの病院に通ったそうですが、キドナについて知らない病院がそのうち2つ。ACE阻害薬についてはひとつの病院が効果よりマイナスの方が大きい、2つの病院は早い段階なら有効と判断していたそうです。 

自宅での輸液も許可をもらうのが大変で、「念書も書くし保証金払ってでもお願いしますと号泣して頼んでやっと出来る様になった」そうで、納得のいく治療を受けるために奔走されたそうです。 

エポジンを1箱で購入したとのこと...。これは病院側と薬問屋さんとの問題もあるのでしょうが、ハルちゃん以外には使うネコさんがいないからこその1箱買いになったのでしょう。エポを処置をしてくれる病院がなかなか見つからなかったということは、獣医さんにも「使った経験がない」という人が意外に多いのかもしれません。 

飼い主さんの努力のおかげで、貧血に苦しむことはなかったハルちゃん。いろいろな病気を併発していながらも、きっとどんなにか大切にされていたかを伺い知ることができます。