ケース16/ピケちゃん

 

 

ピケちゃん/6〜7歳

薬剤名

エスポー、エポジン


投与時の体重と投与量

3.9kg、投与量不明

 


投与回数と数値の変動

●18.0%を示した2005.10.13投与スタート

●2005.10.14・2005.10.16に投与(※輸血併用)  13.0→22.0%(10.19)→27%(10.28)→25.3%(11.12) 

●2005.12.02・2005.12.05・2005.12.09に投与  18.5%→21.0%(12.13)→21.9%(12.26) 

●2006.01.25・2006.01.30・2006.02.03に投与し、17.7%→31.0%(02.07) 

●2006.03.11・2006.03.15に18.0%から投与 

●2006.03.29に22.8%から投与 

●19.5%を示した2006.04.15・2006.05.01に投与

●20.5%を示した2006.05.19・2006.06.09に投与

●16.9%を示した2006.06.27・2006.07.11・2006.07.26に投与

 

〜転院して腹膜透析を開始し(2006年8月)、エポジンに変更〜

 

●2006.08.07・2006.08.10に投与   →20.1%(08.09)→20.7%(08.18)→27,4%(09.01) 

●19.2%を示した2006.10.17・2006.10.20に投与

●16.4%を示した2006.11.13・2006.11.15に投与(※輸血併用)  

他の貧血対策

輸血2回、蛋白同化ホルモン(2006年8月から月1回)、ペットチニック 


皮下輸液もしくは静脈点滴

 

 

抗体について

わからない

 

 

飼い主の感想

輸血で始まり輸血で終わったというくらい、最初から貧血との戦いはついてまわりました。始めて病院で腎不全と診断された時が18%、低いながらもエスポーで改善を図ろうとしましたが毎日静脈点滴を受けなくてはならず、そのせいも手伝ってかエスポーの効果が出る前に、 あっという間に13%まで落ちてしまいました。 

 

輸血と多分エスポーのおかげで27%まで回復しましたが、その時の先生のお話は「やはりエポというのは免疫ができてしまうのであまり使えない」というものでした。そのまま維持できれば問題はなかったのですが、ごはんもあまり食べれず、毎月検査をすると16~18%まで落ちてしまっていて、その度に3,4日毎に3回というペースで投与しました。 

毎月の血液検査は恐怖で、どうか今回もちゃんと血が増えますように…と祈る日々でした。そんな中で先生と話しているうちにわかってきたことは、「すべてのネコちゃんに抗体が出来るという訳ではない(30%くらいの確率だと)」「何回打てば抗体ができるというものでもない」ということでした。 

 

3月の終わりくらいに「この子は抗体ができる子じゃないのかもね」と先生に言われ、それまでの結果から(まとめて投与しても22%くらいまでしか増えない)、2週間毎に1回投与して20%越えくらいのところで維持をしていく方向にしました。沢山増えてくれるのだったらまとめて投与した方が食欲も回復するだろうし、体力的にも気持ち的にもいいに決まってると思うのですが、うちの場合はヘマトクリットがそこまで増えなかったので、抗体とピケちゃんの通院の負担も考慮することにしました。 

 

ペットチニックに関しては最初の病院の先生の場合、「まあそんなに効くもんでもないけどねぇ」って感じだったし、お薬も他に飲まなくてはいけなかったので(高リン対策の薬、食欲不振対策の薬など)嫌いな物を無理矢理...というのも嫌で、あまりあげていませんでした。 

 

セファランチンも途中飲ませていたことがありましたが、これはなんというか万能薬みたいなノリで、行き詰ってなんでもいいから利いて〜〜〜〜!って感じで、特に貧血だからあげていたわけではありません。

 

2006年8月に転院し、新しい先生にエスポーを2週間に1回で維持していたことを報告すると、こちらの先生は「やはり一気に上げたほうが調子も良くなっていいはず」と、大体月に1度、2,3日毎に2回エポジンを投与(蛋白同化ホルモンも)という治療に変わりました。 

なぜエスポーじゃなくエポジンに変えたのかは、おそらく抗体を心配しての事で、 

●エスポーとエポジンはタイプが違うから、エスポーで効かなくなった子もエポジンで効いたりもする 

●ペットチニックは、結局エポを打っても血になる元がなければ作れないから飲ませた方が良い 

という事でした。 

 

抗体ができたかどうか...先生は最後に「またエスポーにもどしてみましょう」と言っていたので抗体を心配していたと思います。 

でも私は出来ていないと思っています。16%まで落ちてしまったのは、多分ごはんが全然食べれなかったからだと思うし、それまでも16%まで落ちたことは何度かあったし、その度に復活してくれてたし。 

 

最終的には答えは出ませんでしたが、他のいろいろなことが無ければまだまだ頑張れていたはずだと。本人(本猫)は最後まで諦めてなかったし、生きる気いっぱいだったんだから。私はそう信じています。 

エリスロポエチンで貧血が少しでも改善できた時は、やはり調子も良さそうでした。ごはんもいつもよりは食べれたし、機嫌も良さそうにしてました。

抗体が出来てしまうのは怖いけど、それでも他に治療法がないのであれば使うのは仕方がないことだと思います。私は少しでもご機嫌な時間を作ってあげたいと思います。 


管理人補足

ピケちゃんは腹膜透析(CAPD)を行っていました。腹膜透析によって 140 オーバーだったBUNが一時期は64 まで下がったそうです。 

デブちゃんの場合は完全室内飼いに切り換えることができず腹膜透析は断念しました。また腹膜透析のノウハウがある病院もかなり少ないと思います。 

感染症の徹底した予防など気を配らなければならない部分も多く、またお金も非常にかかります。麻酔をしての手術も必要になります。誰にでも簡単に勧められるものではありませんが、ピケちゃんと飼い主さんは腹膜透析に出会い、ピケちゃんは再び“美味しい・楽しい”を手に入れることができました。ゴキゲンな日々を飼い主さんとともに過ごすことができました。 

 

ピケちゃんはエスポーとエポジンを両方使っています。「エスポーとエポジンはタイプが違うから、エスポーで効かなくなった子もエポジンで効いたりもする」という獣医さんの言葉は興味深く、もし使い分けることで抗体形成に対処できるなら…と思います。

 

ピケちゃんは、腹膜透析をしたから貧血になったのではありません。また静脈点滴をしたから「貧血が進む」というのも、厳密にいえば違います。 

静脈点滴によって体に水分が入ると血液も薄まります。しかし赤血球が流れ出ていってしまうわけではなく、もともと持っている赤血球の数は変わりません。血液が薄まることで「一時的に貧血状態を進めてしまう」のです。ですから静脈点滴をするとヘマトクリットが下がってしまって、エポだけでは追いつかなくなってしまうケースがあります。

腹膜透析は超簡単にいえば「腹膜を利用してお腹に透析液を入れ、そこに毒素を集めて抜く」という方法なので、血液が薄まることはありません。「血液を薄めて、一時的に貧血を進めてしまうことはない方法」だといえると思います。