資料抜粋

 

J-VET12月号『慢性腎臓病(慢性腎不全)の治療のエビデンス 

 〜貧血の改善〜』より

※ただし、犬と猫についてまとめて書かれています。
※いろんな研究者のいろんな説をもとに(資料として)書かれている論文のようです。

●エリスロポエチンの役割について 
貧血は犬や猫における慢性腎臓病(CKD)の特徴的な症状のひとつ。
慢性腎臓病における貧血の原因は、腎臓におけるエリスロポエンチンの産生低下、尿毒症物質における赤血球の寿命の短縮と破壊の亢進、骨髄造血抑制とエリスロポエチンの活性阻害、消化管出血や栄養欠乏、骨髄繊維症、骨髄における鉄利用の低下、ビタミンB12の阻害など多岐に渡る。
造血においてエリスロポエンチンの果たす役割はきわめて重要。エリスロポエンチンの産生臓器は腎臓だが、猫の場合は多少肝臓でも産生されているようだ。

●エリスロポエチンの使用量といい作用 
エリスロポエチンの作用としては、赤血球前駆細胞を刺激することにより、赤血球の分化と成熟、ヘモグロビン合成、網状赤血球の循環血中への放出の促進などがあげられる。
しかし現在日本で使用できるのは遺伝子組換えヒトエリスロポエチン(rHuEPO)である。
推奨される投与量は、100U/kg、3回/週を皮下または静脈内投与でヘマトクリットが30%になるまで継続し、その後は50〜100U/kgを1〜3回/週に漸減する方法である。
犬や猫にヒトエリスロポエチンを投与することで
・網状赤血球を増加させ
・治療から2〜3週間以内にヘマトクリット値、赤血球、ヘモグロビン濃度を増加させる
と示唆されている。

さらに研究者によっては、
・貧血の改善に加え、
・食欲、元気、体重、意識レベル、体力など
臨床状態の改善がみられることも報告している。

●副作用・悪い作用について
ヒトエリスロポエチン(rHuEPO)の投与は、副作用をもたらすことがわかっている。
・貧血
・抗rHuEPO抗体の産生(抗体産生の発生率は20〜50%に上るといわれている)
・痙攣
・全身性高血圧
・鉄欠乏
などが認められる。
したがって犬や猫におけるヒトエリスロポエチン(rHuEPO)の使用は、非常に効果的である反面、危険性があることをしっかりと考慮し、綿密な検査とそれをもとにした投与計画を練りながら使用することが大変重要である。

●ヒトエリスロポエチン(rHuEPO)の効果を発揮するために大事なこと
ヒトエリスロポエチン(rHuEPO)の効果が十分に発揮されない理由は、
赤血球の産生や鉄、および鉄代謝に必要な栄養素(ビタミンB12、葉酸、ナイアシン、ビタミンB6)が欠乏するからである。
鉄は硫酸鉄を使用し、鉄の投与は猫なら50〜100mg/日で開始して鉄の血中濃度が適正な値になるまで用量を補正する。
エリスロポエチンの使用前に、行うべき処置をとってから使用すると、エリスロポエチンの効果がさらに高まるはずである。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ケース9のハルちゃんの飼い主さんより寄せられたものです。

以下の記述があったそうです。

 

臨床獣医師向けの雑誌「SA Medicine 39号」より

 

はじめは反応性もよく貧血の改善に効果的であるが、すぐに反応性がなくなってしまうことをよく耳にる。この現象は抗rHuEPO抗体ができるためであると思われていて、その時点でrHuEPOの治療をあきらめてしまう場合が多いようであるが、多くの場合が鉄欠乏症や造血栄養素(B12や葉酸)の欠乏によるものであることを知っておくべきである。

 

抗体誘導作用がもっとも重要な副作用であり、rHuEPO投与を受けた動物の約30%で生じると考えられている。