◆使用する期間について
「EPOの使い方」でなく「使われ方」としたのは、「使い方」が明確でないからです。
「へ?前項に『EPOのガイドライン』があるじゃんか?」と思われる方もいるでしょうが、このガイドラインどおりにEPOを投与している獣医さんが、日本にどれだけいるでしょうか?
アンケート結果を見ていただければわかると思いますが、ガイドラインにあるような「継続して使い続けた」というケースは、ほとんどありません。
が、それが「悪」かというと、そうとも言い切れません。ガイドラインが絶対、ともいえないからです。
「EPOのデメリット」のなかでもふれましたが、「およそ30%のネコに抗体ができる!」という結論は、たったの11匹を対象に研究されて出されたものです。
ガイドラインが作られたのもかなり前だし、ガイドラインは正しいかもしれないし、しかし「絶対に100%すべてが正しい!」ともいえないのかもしれません。
使用期間については、ガイドラインを参考にしつつも、飼い主さんの事情やネコの性格(病院嫌いとか)などを考慮し、「そのコなりにアレンジされて投与されている」というのが実情のようです。それがいいことなのか悪いことなのかはわかりませんが、理解はできます。
◆使用量について
EPOの製剤としては、「エスポー」と「エポジン」の2つが代表的です。
例えば、こちらにエスポーの製品情報がありますが「エスポー注射液750」とか「エスポー注射液1500」とか「エスポー注射液3000」など注射液にも種類があります。これは、EPOの含有量が違うということです。「エスポー注射液1500」の場合は、エポエチンアルファ(遺伝子組換え)が1500国際単位含有されています。
ガイドラインによると、100単位/kg とあります。3キロのコなら300単位というわけです。
「エスポー注射液1500」なら、バイアル(薬の瓶)2mlに1500国際単位のエポエチンアルファが含有されているので、3キロのコなら0.4mlが通常の投与量のようです。
ただしこれは、「エスポー注射液1500」の場合の算出方法であり、注射液の含有量によって投与量は変わってきます。
また、「貧血が改善してこない場合、投与量をさらに体重1kgあたり25〜50ユニット(単位)増やしてもよい」とガイドラインAにはあります。
3キロのコを150単位/kgとするなら、450単位あげていいわけです。
1500単位のうちの450単位なら、「エスポー注射液1500」の場合は、3キロのコであるなら、0.6ml程度まで1回に投与してもいい、ということになります。
ガイドラインBには、「48.4〜145単位/kg」が投与量とされています。そして「貧血が重度すなわちヘマトクリットが14%以下であれば、最初は最大量を用いるし、高血圧を認める場合とか貧血が重度ではない場合には最小量を用いる」とあります。
つまり、ガイドラインによるなら「基本となる数値でまずはスタートし、そのコの貧血の状態によって増やしたり減らしたりしていい」ということだと思います。
◆ 使用頻度について
これもガイドラインを参考にしつつ、週1回、週2回、週3回というふうに、ネコによってばらつきがあるようです。
貧血の状態によって獣医さんが頻度を決めていると思いますので、使用する前はしっかりと相談するといいと思います。
◆投与方法について
病院や往診で獣医さんが投与するのが基本中の基本です。ですがなかには、獣医さんに許可を得た上で自宅で投与したり、自宅で皮下輸液の際にリンゲル液に混ぜて投与した例があるようです。
◆入手方法について
ケース9のハルちゃんの場合ように、EPOの入手自体が難しい場合があるようです。
ハルちゃんのケースで飼い主さんの感想を拝見しますと「10アンプルをいっぺんに購入した」とあります。
これは動物病院と薬問屋さんとの問題だと思うのですが、薬問屋がその単位でしか売ってくれないとなると病院側もまとまった量を仕入れるしかありません。
例えば20本病院が買っても、場合によっては数本で貧血の数値が安定してしまって残りはいらなくなる可能性もあります(30〜40%に維持させるにしても、使用頻度が減る可能性もあります)。
使わないまま消費期限を迎え、破棄…ということになれば病院側は多大な負担を強いられることになります。
ハルちゃんの飼い主さんが1箱買いを迫られたのも、おそらくそういった背景があるのでは?と推測されますし、こういう背景があるから積極的に使用できないということもひょっとしたらあるのかもしれません(あってほしくないですが)。
薬問屋さんと動物病院の関係はよくわかりませんが、いつでも小分けで入手できる状況であってほしいと思いますし、もし近い将来にEPOを使う可能性が少しでもある場合は、病院にあらかじめ確認しておくといいかもしれません。